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虎の威を借る狐
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作者:未知 文章来源:日本ネット 点击数 更新时间:2004-11-16 18:56:00 文章录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语 |
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「いいえ、王様、 北の国々がなんで一宰相の昭奚恤などを恐れまするものか。 まず、お聞きくだされませ。 もとより虎は百獣の王、 ほかの獣を見れば、 ただちに取ってこれを食らいます。 あるとき、この虎が狐をひっとらえたと思しめせ。 とそのとき狐が申しましたそうな。 天帝はこの狐をば百獣の長と定められている、 よって、もしこのわしを取って食らうなら、 天帝の命にそむくものよ。 もしおぬしがそれを信じぬなら、 まあわしのあとについて来られい、 わしの姿を見て逃げ出さぬ獣は一匹もないぞ。 それを見れば得心がいこうよ…… と申しましたげな、 なるほど道理じゃ、と虎は思いました。 さて、狐が先にたち、 虎はそのあとについてまいりました。 一匹の獣に出あいまする。 そやつはとんで逃げました。 つぎの一匹、これもふるえあがって逃げだす。 ……はて、なるほど狐をおそれて逃げるわい、 と虎は思いこんだそうでござります。 その実、獣どもをおそれ走らせたのは、 狐の後ろにいる虎の姿であったのでござりまするがな。 さて事はおなじでござりまする。 北の国々が、 なんで昭奚恤ずれを恐れまするものか。 恐れますのは、 その背後にある楚国の軍勢、 すなわちわが君の強兵でございますぞ。」 (「戦国策」楚宣王) 戦国時代のある日のことであった。楚の宣王が群臣にむかって、 「北方の国々は、 わが宰相の昭奚恤を恐れておるかな?」 とたずねたとき、江乙というものが、この答えたという。これが「虎 の威を借る」とか、「虎の威を借る狐」とかいうことばのはじまりとな った。小人が権力をかさに着ていばりちらすこと、また、その小人のこ とを、これらのことばであらわしている。 ところがである。まだあるのだ。この話だけだと、昭奚恤は君側の侫 臣で、江乙は厳然たる大忠臣みたいだ。その江乙が問題なのだ。彼はも と魏の国につかえて、魏の使いとして楚にきた男である。それがそのま ま居ついて、楚につかえるようになった。うまいこと取り入って、王の 側近になったらしいが、そのあいだも、魏と内々で連絡していたけはい が濃いのだ。ところがその彼にとって、目の上のこぶになるのがいる。 昭奚恤である。昭家は楚の王族の出で、代々の重臣である。そして昭奚 恤は、大岡裁きに似た逸話があるように、ただのお坊ちゃん宰相ではな いらしい。しかもその奚恤は、江乙が魏に内通しているとにらんでいた らしいのだ。これでは、江乙が昭奚恤をじゃまにするのは、まったく当 然だろう。 江乙は、やっきになっていた。「戦国策」でもわかるように、彼はな んとかして昭奚恤を蹴おとそうと力をつくしている。「虎の威を借る狐 でございます」、「奚恤は魏から賄賂をとりました」、「わたくしを除けも のにいたします」……あらゆる機会をとらえて、宣王の耳に悪口をつぎ こんでいた。なんのことはない、江乙こそ、「虎の威」を借りたくてウ ズウズしていたのだ。この話をしたのも、そのためなのだ。隠すよりあ らわるるはなし、というものである。 そして、これが戦国というものだろう。一皮むいてみれば、やさしげ な羊の皮の下に、狐がいるか、狼がいるか、虎がいるか、わかったもの でない社会、はてはどれが狐で、どれが虎かもわからなくなる世の中… …、いや、これは戦国だけではないかもしれなかった。
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