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珠江流れる美食の街(広州)

作者:山浦 義…  来源:YOMIURI   更新:2004-5-22 21:46:00  点击:  切换到繁體中文

 

中国第3の大河、珠江(しゅこう)の両岸がライトアップされていた。ガジュマルに緑のイルミネーションがともされ、200メートル以上離れた対岸のホテルやレストランのネオンが水面に映し出される。腕を組みながら大河を眺めるカップルの姿も目立つ。

 人口700万人の華南一の大都市も、夜は時の流れがゆったりと感じる。「広州市民が自慢できる景色の1つですよ」。ガイド兼通訳の広東省中国国際旅行社、周志鴻さん(39)も夜の珠江はお気に入りだ。

 広州は広東料理の本場。珠江が望めるレストラン「東江海鮮酒家」に足を運んだ。1階はまるで水族館だ。

 「ホウペン(好平)」(安いですよ)。

 水槽に、エビ、魚、貝など海産物が並び、大きな声で客に勧めてくる。魚介類だけではない。ヘビ、ウサギ、鶏、アヒル、片隅には「野猫」と書かれた猫の姿まであった。素材の数は魚介類150、野菜、肉、スープ、デザート類が150。

 素材を客が実際に見て選び、調理方法も指定する方式が店の自慢だ。あまりに種類も多く、料理方法も分からないので、周さんの力を借りながら何とか注文にこぎつけた。

 ゆでエビは小柄で身が引き締まり、1つまた1つと口に運ぶとなかなか止まらない。大芥菜という青菜のスープは、唐辛子入りだが、辛すぎるわけではなく食欲が出て体も温まっていく。メーンディッシュは「深海大蘇眉」という海魚の蒸しもの。しょうゆベースの味にネギと豆板醤(とうばんじゃん)がほどよく利き、淡泊な白身だ。さらにチャーシュー、ガチョウの足の煮物、セロリとナッツとエビのいため物が続く。全体的にうす味で、日本人でも口に合うのが広東料理の特徴だ。

 「素材が新鮮なのが第一。メーンは広東料理で、それ以外の料理も幅広く取り入れている。豆板醤と酢が普通の店の味付けの基本だが、うちの店は海鮮でていねいにだしをとり、スープに生かしているんです」。店長の徐貴森さん(29)は胸を張る。

 もともと広東料理は肉、野菜、川魚を食材としていたが、今では海鮮が主流となっている。別の日に訪れた「北園潮州海鮮漁港」店長(50)は「商売しやすい広東省には外国人も含めいろんな人が集まるので、調理方法が融和して、味も進歩するから料理がおいしい」と解説してくれた。ただし、「海鮮料理を楽しむには財布の節約はできない」という言葉があるとか。

 街中のちょっとした食堂でも麺(めん)やおかゆ、それに広州生まれのワンタン麺や、拉腸という米をドロドロにして、中に具を入れたものが5―10元(70―150円)程度で食べられる。

 食を支える中心街北部の三元里農貿市場。フルーツが山盛りになった入り口からほの暗い市場に入ると、3メートル間隔で肉、魚、野菜の店が並ぶ。店の数は500に上る。人だかりが多いのは豚肉と魚のコーナーだ。カエルやウナギ、カメなどを売る龍子建さん(37)は「ウナギだけで1日50キロも売れるんだ」と自慢しながら、電話番号を教えてくれた。どうも日本のレストラン経営者が仕入れに来たと勘違いしたらしい。

 広州は2800年の歴史を持つ古都でもある。中心部の越秀公園の丘には明代に建てられた広州城の楼閣「鎮海楼」(広州博物館)が街を見下ろす。広東省出身の孫文を記念した中山紀念堂には「全世界が平等に」という願いが、空と同じブルーの屋根に込められていた。20世紀初頭、英仏の居留地だった沙面(さめん)は、65の洋館が並び、ノスタルジックな雰囲気が漂う。奥行きの深さを見せつけてくれる街である。

 それでも、オレンジの電球に照らされた市場の食材を見て思うのはやっぱり「食は広州に在り」。夜は再び広東料理の店に繰り出すことにした。


 

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