むかし、ある旅先(たびさき)で、二人のお爺さんが一緒になりました。一人は金持ちのお爺さん。もう一人は貧乏(びんぼう)お爺さんでした。
お金持ちのお爺さんが、「うちには宝(たから)の蔵(くら)がたくさんある。」と話し始めました。すると、貧乏なお爺さんが、「うちには、人に自慢(じまん)するような宝はほとんどないが、一つだけある。」と答えました。
「では、いつの日か、宝比べをしようじゃないか。」ということになり、二人は日を決めて、自分(じぶん)の家へと戻って行きました。
さて、約束(やくそく)の当日(とうじつ)が来て、金持ちのお爺さんは、番頭(ばんとう)と丁稚(でっち)を連れて、荷車(にぐるま)に宝を山積みにしてやってきました。
見物人(けんぶつじん)も大勢(おおぜい)集まってきましたが、貧乏なお爺さんはなかなか現れません。
見物人が、財宝(ざいほう)にみとれていると、やがて、貧乏なお爺さんも現れました。
彼は何も持っては来ませんでした。
彼の後には唐傘(からかさ)を一本ずつ抱えた小さな子供たちが24人も続いていました。
そこへ、にわかに夕立(ゆうだち)が襲(おそ)ってきて、金持ちのお爺さんは、たくさん並べた宝物を片付けなければならなくなり、てんやわんやでした。
一方、24人の子供たちは、一斉(いっせい)に傘を差して、ニッコリと笑っておりました。
このとき、金持ちのお爺さんはいいました。
「山ほどの宝があっても、子に勝る宝はない。やっぱりわしの負けだ。」と頭を下げたということです。
▲注解▲
番頭(ばんとう)―主管、总管、领班。
丁稚(でっち)―徒弟、学徒、徒工。
荷車(にぐるま)―载货车、运货车、手推车。
夕立(ゆうだち)―傍晚的雷阵雨。骤雨