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日文小说连载之十二国记

 

「|罌粟《けし》かえ」
 突然声をかけられて、|禎衛《ていえい》は花びらをすくう手を止めた。背後を振りかえると、|海桐泉《かいどうせん》に近いことから|海桐宮《かいどうぐう》と呼ばれる建物からひとりの女が出てきたところだった。
 |蓉可《ようか》は女を見やって首をかしげる。見覚えのない顔だったからだ。|歳《とし》の頃はわからない。若いようでもあり、すでに中年を越えているようでもあった。着ているものも身につけている装身具も、|女仙《にょせん》がつけるそれとは格段に違う。身分の高い女なのだとは想像がついたのだが。
「──|玄君《げんくん》」
 禎衛があわててその場に平伏し、蓉可もぎょっとしてそれに続いた。
 現れたのは|蓬廬宮《ほうろぐう》に住まう|女仙《にょせん》の|長《おさ》、|天仙《てんせん》|玉女碧霞玄君《ぎょくじょへきかげんくん》──|玉葉《ぎょくよう》だったのだ。
「|罌粟苑《けしえん》の花が風に乗ってきたのでございましょう」
 禎衛が述べると、玉葉は|玲瓏《れいろう》とした面を奇岩のあいまの空へ向けた。
「妙な風の吹くことよの」
「はい」
 玉葉は少しの間、|柳眉《りゅうび》をひそめるようにして空を見上げていたが、すぐに視線をおろして蓉可のほうへ向けた。
「蓉可といったか。──|蓬山《ほうざん》にはもう|慣《な》れたかえ」
 蓉可は声をかけられて|狼狽《ろうばい》した。
 まだ下界にいた頃、玉葉は伝説の中にしか住まないものだと思っていた。それほど|隔《へだ》たりのある女神なのだ。文字どおり雲の上の人に会って声までかけてもらっては、うろたえずにいることなどできない。
「は……はい」
「まだ道に迷うようですが」
 禎衛が笑いぶくみに言ったので、蓉可は真っ赤になった。
 玉葉は耳に快い声をあげて笑う。
「それは新参者のさだめよの。かく申す禎衛も、昔にはさんざん迷うておったほどに。じきに慣れよう」
 ちらりと蓉可が禎衛に視線を向けると、禎衛は|屈託《くったく》なく笑っている。
「ほんに。──|妾《わたくし》よりは、よほどものおぼえはよいようでございます。労苦をいとわず、よう働いてくれますし」
 玉葉は|笑《え》んだ。
「それは、感心なこと」
 蓉可はさらに赤くなってしまった。
「と、とんでもございません。まだまだ|叱《しか》られることばかりで──」
「慣れるまでは、叱られるのも務めのうち。気落ちせずにな」
「──はい」
 深々と頭を下げて額を地につけた蓉可を見やって玉葉は|微笑《わら》う。同じく|微笑《ほほえ》んで若い女仙を見ている禎衛に視線を向けた。
「ときに、|戴《たい》の|女怪《にょかい》が|孵《かえ》ったとか」
「さようでございます」
 玉葉は常には蓬廬宮にはいない。ふいにどこからともなく現れる。いつもはどこにいて、どこからどうやって現れるのか、禎衛は知らなかった。|不思議《ふしぎ》に思わないでもないが、|一介《いっかい》の|女仙《にょせん》が|詮索《せんさく》してよいことではない。
「名は?」
「|汕子《さんし》、と」
「その、汕子はどこじゃ?」
「|捨身木《しゃしんぼく》の下に。いっかなはなれようといたしません」
 禎衛が言うと、玉葉はふっくりした|紅唇《こうしん》で笑った。
「いつものことながら、|女怪《にょかい》とは情の深いものよの」
 禎衛もまた笑んでうなずく。
 |麒麟《きりん》には親がない。親の代わりを務めるのが女怪で、これは捨身木の根に実る。麒麟の実が枝につくと一夜で|孵《かえ》って、これから|十月《とつき》、麒麟が孵るまで枝の下で熟していく果実を見守りつづけるのだ。
「して、どちらと?」
 女怪だけがこれから生まれる麒麟の性別を知っていた。
「|泰麒《たいき》だそうでございます」
「そうか」
 |牡《おす》は|麒《き》、|牝《めす》は|麟《りん》、|国氏《こくし》を冠して号となすのが古来からの決まりである。現在、捨身木に実っているのは|戴国《たいこく》の麒、国氏は「泰」ゆえに「泰麒」と呼ばれる。
 玉葉はひとつうなずいて、捨身木に至る道へ足を|踏《ふ》みだした。禎衛と蓉可がそれを見送って深く頭を下げたときだった。
 突然、大気が|震撼《しんかん》した。
 逆巻く勢いで突風が小道を|駆《か》け抜けた。
 声をあげるいとまもなく、禎衛はその場になぎ倒される。同じように倒れた蓉可が悲鳴を上げた。
 地が鳴動する。地鳴りは奇岩にこだまして、迷宮が不気味な|咆哮《ほうこう》をあげた。
「なにが……」
 蓉可の|狼狽《ろうばい》しきった声に、禎衛は答えることができなかった。
 単なる嵐とも地震とも思えない。単にそれだけのことならば、必ず|八卦《はっけ》に予言があったはずである。だいいち、単なる天変地異なら、天神女神の力によって幾重にも守護されたこの蓬山に起こるはずがない。
「玄君、宮の中へ」
 とにかく|長《おさ》の安全をはからねばと、禎衛が石畳に爪を立ててなんとか顔を起こすと、玉葉は天を|仰《あお》いで立ちつくしていた。
 いつのまにか空が赤い。薄い赤い|紗《しゃ》を幾重にもおろしたようにして、|赤気《せっき》がゆらめき空をおおっていた。
「|蝕《しょく》か……!」
 玉葉は鳴動を続ける大地にはかまわず、空で踊る極光を見すえる。
 あの突風に倒されずにすんだのは、さすがは女神と言うべきか。それでも禎衛には、それに感嘆する余裕などありはしなかった。
「蝕──」
 大気がねじれ、のたうつように震えるのがわかる。そのたびに頭上で赤気が|不穏《ふおん》な|蠢《うごめ》きをくりかえした。
 赤気のはざまに薄く、|蜃気楼《しんきろう》のようになにかの影が見えた。
 それは海の|彼方《かなた》に細く広がる大地の幻影である。
「そんな──」
 この世ならざる土地が、接近しようとしている。
 細かく可憐な|海桐花《とべら》の花が、突風に散って|飛礫《つぶて》のように禎衛を打った。
「ああ──|泰果《たいか》があるのに……!」

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