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管鮑の交わり

作者:未知  来源:日本ネット   更新:2004-11-13 19:15:00  点击:  切换到繁體中文

 

 唐代の詩聖としてその名も高い杜甫の詩に「貧交行」と題して、
 
  手を翻せば雲おこり手を覆えば雨ふる、
  ふんふんたる軽薄なんぞ数うるを須いん。
  君見ずや管鮑貧時の交わり、
  此の道 今人棄てて土の如し。
 
 というのがある。その意味は、人情義理が地に堕ちた当世では、堅い
交りをむすんだはずの友人でも、ふとしたはずみで気が変わり、全くお
話にならない軽薄さだ、ちっとは昔の管仲と鮑叔牙の間のような、貧富
変わらぬ交友ぶりを見習うがよろしいというのである。
 
 その管仲と鮑叔牙の交友ぶりとは?
 
「史記」の「管(仲)列伝」によれば――
 
 管仲、名は夷吾、春秋時代のはじめのころの斉のひとである。若いこ
ろから鮑叔牙と無二の親交をむすび、鮑叔牙も管仲のなみなみならぬ才
智のほどに心から惚れこんで、いつも彼のよき同情者理解者であった。
 
 のち管仲は召忽とともに斉の公子糾の側近に仕え、鮑叔牙はその弟君
にあたる公子小白に仕えた。ほどなく、二公子の父の襄公は従弟の公孫
無知の叛乱に遭って弑されたので、管仲・召忽は公子糾を奉じて魯の国
に、鮑叔牙は公子小白を奉じて筥の国に亡命した。僭主公孫無知が国人
に誅殺されるに及び、二公子は国君の地位を争うこととなり、従って管
仲と鮑叔牙も敵味方の仲となった。管仲は公子糾を位につけるため、一
時は小白の命をさえねらったが成功せず、小白はついに鮑叔牙や国元の
大夫高奚の協力によって位についた。これが春秋五覇のひとりとして名
高い斉の桓公である。
 
 抗争に敗れた公子糾は、桓公の要求により亡命先の魯で殺され、その
協力者だった管仲と召忽は斉に護送を命ぜられたが、召忽は自殺して果
て、管仲ひとり従容として縛についた。桓公にしてみれば管仲はかつて
自分の生命をねらった不屈者、その首を刎ねて意趣を晴らすつもりでい
たのだが、鮑叔牙はかつての友誼を忘れず、しかも管仲の政治的才能に
深く期待するところがあったので、桓公に向かって、
 
 「御主君が斉一国をお治めになるだけで御満足なら、高奚と私とでも
十分でございましょう。しかし天下に覇を唱えるのがお望みなれば、管
仲をお用いなさなければなりませぬ。」
 
と勧めた。度量識見の大きい桓公は信頼する鮑叔牙の忠告を容れて、罪
人たるべき管仲を快く迎えいれると、さっそく大夫に任じて政治に当た
らせた。はたして管仲は大政治家たるの手腕を発揮して、あの有名な、
 
 「礼・儀・廉・恥は国の四維、四維張らざれば国すなわち滅亡せん」
                         (「管子」牧民篇)
 「倉廩みつれば則ち礼節を知り、衣食足れば則ち栄辱を知る」
 
 ということばにうかがわれるような、国民経済の安定に立脚した徳本
主義の善政を敷き、ついに桓公をして、春秋随一の覇者たらしめたので
ある。

 これらのことはもとより桓公の寛容と管仲の才智が相俟っての成功で
はあるけれど、その発足点には鮑叔牙の管仲に対する終始かわらぬ友情
があっての上でのこととも言える。だから後年、管仲は鮑叔牙に対する
感謝のまことをこめて、こう述懐している。
 
 「わたしはまだ若くて貧乏だった頃、鮑君と一緒に商売をしたことが
あるが、その利益の割前を、いつも彼より余分にとった。しかし彼はわ
しを欲ばりだとは言わなかった。わしが貧乏なのを知っていたからだ。
また、彼の為を思ってしてやったことが失敗で、なおさら彼を窮地に陥
れたこともあったが、わしをおろか者だとは言わなかった。事にはあた
りはずれがあるのを知っていたからだ。わしはまた何度も出仕してはそ
のたびに馘になったが、それを無能だとは言わなかった。まだ運が向い
てこないのを知っていたからだ。戦の時にも、何度も敗けて逃げ出した
が、それを卑怯だとは言わなかった。わしに年老いた母のあるのを知っ
ていたからだ。また糾さまが敗れ召忽が自殺した時、わしだけが縄目の
恥をうけたが、それを恥知らずだとも言わなかった。わしが小事に抱泥
せず、天下に功名のあらわれぬことだけを恥としているのを知っていた
からだ。わしを生んでくれたのは父母だが、わしを知ってくれたのは鮑
君だ。」
 
これほどまでに自分を知ってくれる友人があったならばと、私も思う。
 
 


 

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