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跼 蹐

作者:未知  来源:日本ネット   更新:2004-11-13 19:19:00  点击:  切换到繁體中文

 

 跼蹐とは、“跼天蹐地”の意で、頭が天にふれることを恐れて“天に
対して跼り(背をかがめ)”地が凹むことを恐れて“地に対して蹐する”
こと、すなわち、びくびく恐れおののいて身のおきどころもない、とい
った状態を形容する場合に用いる。六朝時代の宋の范曄の著した「後漢
書」の「秦彭伝」に、
 
 ――姦吏跼蹐して、詐を容るる所なし。
   (公式な秦彭を迎えたため、不徳義な役人共はちぢみ上がり、
    不公平の運用する余地がなくなった。)
 
 という用例がある。
 
 また、“跼天蹐地”の方には、六朝の梁の武帝の長子昭明太子の編ん
だ「文選」に収められている、張衡の「東京賦」に、
 
 ――豈徒らに高天に跼り、厚地に蹐するのみならんや。
   (どうしてこの高い空の下で背をかがめ、ガッチリと厚い大地の
    上でぬきあしする程度だろうか、それどころか、もっと恐れお
    ののいているのだ。)
 
 という句が見える。
 
 この跼蹐という言葉は、「詩経」の中の「小雅」という、周の朝廷の
賀歌を収録した篇にある、「正月」という詩中の句で、そこでは、
 
   天を蓋し高しと謂えども、
   あえて跼らずんばあらず。
   地を蓋し厚しと謂えども、
   敢て蹐せずんばあらず。
   維れ斯の言を号ばう、
   倫あり脊あり。
   哀しむらくは今の人、
   なんすれぞキ蜴なる。
 
         大空は高いけど、
         背をかがめ行くべかり。
         大地はも厚けれど、
         ぬきあしし行くべかり。
         いまここにかく言うは、
         ことわけのあればこそ。
         哀しきは今人の、
         むしのごと毒もてる。
 
 とあって、奸臣が国政を乱し、義の士が“高天に跼り厚地に蹐して”
禍いに遭わぬよう恐れおののいている、という意味に用いている。
 
 最近の調査によれば、今日の日本のホワイトカラー族は、案外政治に
積極的な関心を抱いているようであるが、このひとびとがかつての“青
白きインテリ”のように、官憲を恐れて跼蹐する社会の来ぬよう、「正
月」の作詞者とともに衷心から願わずにはいられない。
 
 なお「誰か鳥の雌雄を知らん」という言葉も、この「正月」の中の句
で、他の句が「詩経」通例の四語なのに、この句だけは字余りで六語に
なっている。奸臣が権力を握っているため、王が故老や卜官に何を問う
ても、真実を答えるはずがないから、“誰か鳥の雌雄を知らん”すなわ
ち、誰に奸臣・義臣の区別ができようか、と義の士の嘆きを訴えた言葉
である。
 
 


 

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